いちかわ新聞 掲載記事 -2022.5.27号-
お気に入りの衣類は長く大切に着たいもの。有限会社日乃出ドライの市原新大社長に、これからの時期注意することや、衣類を自宅でメンテナンスするコツについて聞いた。
市原代表取締役社長
「虫食い」や「カビ」に注意
気温も上がってきて、梅雨に入ると湿度が高くなってくる。じめじめとした時期に多いのが衣類に付く「カビ」だ。
「クリーニングに出したあとのビニールのカバーは、外してから収納することをおすすめします。カバーをかけっぱなしにしているとその中に湿気がたまり、カビが発生してしまいます」
礼服などは着る機会も少ないため、必要になってからカビに気づき、クリーニングに駆け込んでくる人も多いという。
また、暖かくなってくると「虫食い」にも注意が必要。ウールやシルク・カシミヤ・アルパカなどの天然素材は特に虫がつきやすい。
「虫食いは一つ見つけたら、一緒に収納していた衣類全てをチェックしたほうがいいです。他も被害にあっている可能性があります。
また、衣類の食べこぼしなどをそのままにしておくと虫を呼んでしまう原因になるので、かならずきれいに落としてからしまうようにしましょう。クローゼットには、必ず防虫対策をしてください」
ポリエステル・ナイロンなどの化繊は虫に食われることはないが、紫外線に弱い。「色物などは褪せてしまうと元に戻すのが難しいので、直射日光が当たらない場所に保管しましょう」
「洗濯表示」をきちんと守ろう
自宅で衣類を選択するときは、「洗濯表示をきちんと見ること」が基本だという。
よくあるトラブルが「ウール100%」などクリーニングすべき素材を自己流で洗濯して、縮んでしまうケース。
「濡れているときであればまだ猶予はありますが、乾燥機にかけたりして一度乾いてしまうと、繊維ががっちりと固まってしまいもう元には戻せません」
また「白と黒を分けて洗う」「毛が周りの衣類につきそうなものはネットに入れる」など、基本をしっかり守ることが大切だ。
綿などは自宅での洗濯が可能だが、長持ちさせるためには「表裏逆」で洗濯するといいという。ジャンバーやブルゾンなどはジップを閉めて、裏返してから洗う。プリントがある衣類(Tシャツなど)も同様で、裏返して洗うと加工が長持ちする。
そして「やはり人の手が一番きれいになります」と市原さん。襟・袖など特に汚れやすい部分は、洗剤を付けてブラシでこするなどしてから洗うといい。
プロのクリーニングと使い分けて
家庭で洗えない素材のほか、ジャケットやコートなど「型があるもの」はプロに依頼を。自己流での洗濯は型崩れの原因になる。コートなどは、ワンシーズン着てからクリーニングに出せば十分なので、手入れをしたら次の出番がくるまでしまっておいてOK。
収納の際は、ニットなど柔らかいものは吊るすと伸びてしまうので畳んで、型のあるものはスペースが許せば吊るして収納しよう。
「例えばスーツなどは、大切に使えば50年は着られるものもあります。お気に入りの衣類はきちんとメンテナンスして、長く楽しめるようにしましょう」
Q 「ドライクリーニング」ってなにで洗っているの?
「ドライクリーニング」で使用されているのは「石油」を原料にした特殊な溶剤。
衣類の素材には、ウールなど水に濡れると繊維が緩み、乾いたときに元以上に縮んでぎゅっと目が詰まってしまうものがある。ドライクリーニングの溶剤を使えば、繊維の織りをそのままの状態にして洗うことができる。
左がドライクリーニングの溶剤、右が水で、それぞれ紙でできた折り鶴を入れた(約5年経過)。右は繊維がほぐれて浮いてきてしまい形が崩れているが、左はそのままのシルエットを保っている。